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記録と備忘録による自己同一性の維持を目的とするものです。

1/15 オーディオ再生環境のリフォームに関する備忘録(その2)

昨日に引き続き、オーディオ再生環境のリフォームに関する備忘録。本日はリフォームに当たっての要件整理の経緯を。

 

とはいえ、いきなり要件が出てくるのもはしたない。その手前に基本的な方針があり、それを踏まえての要件整理でなければならないのは諸賢もご承知のとおり。アタシの場合、「レッツハイエンド!」という積もりは全く無くて、「現実的なコストの範囲で、聴きたいものを聴きたいときに聴きたいように聴く」が基本方針となる。

「現実的なコスト」という言葉をもう少しブレイクダウンすれば、たとえば五年スパンでハードウェア交換をするとして年平均投入額を年収の1~2%程度とする、等の数値目標に置換されることになる。人はオーディオのハードウェアのみに生きるに非ず。コンテンツにお金を使うのがむしろ本丸なのだし(アーティストにお金が流れないというのは、長期的には破滅しか待っていない)、趣味と実益がないまぜになっている自転車だって結局継続的にお金がかかるのだ。もちろんオイシイ物も食べたいし、お酒だって飲みたい。その他にも、もっと、もっと。

それぞれ継続したい複数のサブジェクトで有限なリソース(お金)の奪い合いをする以上、持続可能な線を想定することは不可欠だ。「現実的なコスト」の趣旨とはそういうことだ。

そして「聴きたいものを聴きたいときに聴きたいように聴く」は、こう言い換えてもいい。「聴きたいと思った曲を、思いついたその瞬間に、家中のあらゆる場所で、それなりの音質で聴きたい」

音楽に仕えるのではなくて、自分の生活に音楽をまとわせたいという事なのだ。その基本方針を踏まえて要件の整理を行った。

 

 

要件整理その1:音源の決定

この機に有料ストリーミングサービス(SpotifyAmazon Music Unlimitedなど)を使うということも考えたが、以下の理由から踏み切ることができなかった。

  1.  有料ストリーミングサービスは、再生デバイスの縛りがイマイチ厳しい(まあ、そりゃそういう気がする)。ハードウェアへの投資はできる限り避けたく、Raspberry Piなどの安価なLinux系コンピュータ/デバイスを使えないのは困る。
    …これは完全に当方の思い込みによる誤解で、後述のOpenHome化のためにアレコレ調べたところ、VolumioでSpotifyやTIDALを扱うためのPluginを紹介するエントリが数多く見つかった。つまり想定のハードウェア環境を用いるための障壁は、調査と実施のコストに集約されるのだね。しかし本当に困るのは、二番目の理由だ(二つ理由を挙げて、二番目が重要だという展開になっているのは、書いていて気がついたのだが、まるで花森安治のようだ。もちろん内容的にそんな立派なことは書いていないのだが)。
  2. 不可逆圧縮の音源は避けたい。上記の有料ストリーミングサービスは320kbpsとは言え不可逆圧縮。利便性に引きずられて、a.居間、b.図書室の(自分にしては)高めのオーディオセットのメイン音源が不可逆圧縮になるのは困る。何度も聴いた曲が違う音になるのも勿論嫌だし、何度も聴いた曲であっても、まだ発見することがあるのではないかという気がしており、その機会が奪われる(可能性がある)のも困る。TIDALが日本で正式にサービスされていればまた話が変わってくるのだが。(いや、それでも買うべきコンテンツは買うだろう。お布施を払わずして音楽の存続無し!)

 

ということで、手持ちの2000枚程度のCDをApple Lossless Audio Codec(略称:ALAC)でリッピングしたデータを主たる音源として継続運用することを基本とする(※)。別に有料ストリーミングサービスを今後も相手にしないと決めた訳ではなくて、むしろコンテンツを購入するためのショーケースとして、本件リニューアルの次の改修では追加する気満々なのである。

※振り返ってみれば、よく2000枚もリッピングしたものだ。しかも実は二回やっているのだ。2004年にiPoderになった瞬間に始めた初回のリッピングでは、物を考えずにAACでやってしまっていたのだ。どうかしていると思う。

ちなみにALACなのは昔iPoderだった名残であって、Appleワールドでは可逆圧縮はALAC一択だったのだ。ALACがオープン規格に変わり、ライセンス料が不要になった時にはホッとした。その結果、多くのデバイスでALACがサポートされるようになり、ワタシはめでたくiPoderを卒業することができたのだった(リフォーム前には、まだその名残があった訳なのだが)。

 

  

 

要件整理その2:運用形態

さて約2000枚のCDに由来するALACデータを、継続して主たる音源として扱うことにした。これがどの位のサイズになるかというと約600Gバイトである。よって個別のHDDに格納するのは現実的ではなく、リニューアル前もNAS(Samba)に置いて集中管理を行なっていた。しかしSambaにアクセスできるものはPCなどに限られる(N-70AもOKだが)。新たな運用拠点であるd.風呂やe.玄関にもPCを配置するというのは、見栄え、機器費用、操作性、運用の手間、いずれの観点からみてもどうかしている。一箇所に集中して管理される音源、そしてオーディオセット毎に配される(リーズナブルな)再生装置が必要だ。

そして付け加えるなら、情報を生産しない局面でPCを使うことに対して非常に抵抗があるのだ。これは各種ソフトウェア開発で禄を食んではや30年という経験からの見解。PCの万能さ、それに反比例する面倒くささというのは、PCが情報をcreateするためのツールであるという一点において止揚されるものであって(なんかスゴいこと言い出してるナ)、情報をconsumeするだけならPCに頼らずともスマフォやタブレットをインタフェース(=コントローラー)にすればよいのである。もちろんアタシはそうする。1つのコントローラー、マルチなオーディオセット!

  

その要件を満たす(ちょっと古い)解がこれである。

Digital Living Network Alliance - Wikipedia

DLNAとは音声や動画を再生する機器が、ネットワークを通じてどのような規約で連携すれば良いかを定めたものだ。いつも頼りにするWikipediaであるのだが、本件に関してはまともな説明が載せられていない。仕方が無いので備忘録を書くのに必要な範囲でDLNAの説明を行ってみる。

 

まずは「図解、これがDLNA1.5だ」という絵を描いてみた。

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図中では「音源データ」となっているが、これが動画であっても同じである。コンテンツを管理するDMS、それと通信して再生処理実務を受け持つDMR、それらに指示を出して再生処理全体の制御を行うDMC、それら3つの要素でDLNA1.5は構成される。この三つの要素が揃うと、ネットワーク経由で各種コンテンツ再生が制御、実行できるようになるのだ。

 

ところで「要素」と微妙な言い回しをしたのには理由がある。これらは規約通りに振る舞う「何か」であって、まず間違いなくソフトウェアで構成されるのだけれども、そのソフトウェアを実行するハードウェアが分離可能かどうかはケースバイケースだからである。

例えば図中に示したとおり、DMCはスマフォで実行されている(人影の隣のアレは、スマフォのアイコンです)。一般にDMCはソフトウェアの形で提供され、好きなハードウェア(スマフォなり、PCなり)にインストールして利用することになる。対してDMSやDMRはソフトウェア単体の場合もあれば、ハードウェアと一体型の製品として提供されることもある。そして意外なものがDMRとしての機能を提供していたりする。Amazon Fire TV(※)やChrome CastなどもDMRとして動作するのだ。あまり言われてないことだが。

※しかし、ALACを理解しないという重大な問題がこいつにはある。

同様に、最近のNASはほぼDMSとして振る舞うことができる。Network Attached Storage(NAS)とは言うモノの、単にネットワーク上でファイル共有するだけではなく、各種のサービスを提供するのが一般的になっているのだ。

 

 ところでDLNAに(ちょっと古い)という修飾をつけたのは、今は機能的な上位互換であるOpenHomeという規格があるからである。平易な説明は例えばここなど。なぜDLNAがFuckであるかまでを含めて、過不足なくまとめておられる。

kotonohanoana.com

(いやー、スゴいなー、勉強になるなー、と上記を起点にサイトの中をあさっていたら、あら、こちらプロの方なのですね。なんと気前のよい情報の公開っぷり。今回、本当に助かりました)

 

であるのだけれども、

  1. N-70AがDLNAまでしかサポートしておらず、ソフトウェアアップデートの目が低そうなこと(オープン規格をつかった企画のセンスが弱い日本メーカーで、そのうえ生産中止機種だから…)。
  2. NASもNETGEARなのでOpenHomeサーバーのパッケージが用意されていないこと(※)。

NASを買うときにSynologyとどちらにしようか迷ったのだが、質実剛健!とNETGEARを選んだのが裏目に出た。Synologyは家庭内サーバーのプラットフォーム的な発展を遂げていて、本件サーバー(ソフト)も何種類かパッケージが提供されている。READYNAS OS向けのMinimServerのパッケージを見つけたときには小躍りしたのだが、よく見ると当家のやつはサポート対象外。どうもある時期にREADYNAS OSは見切りをつけられてしまった模様。Oh、やはり駄目なのだね。

 

などの制約から、当家では一足飛びにOpenHomeに行けないのである(※)。それにDMR、DMCに何を選ぶかで実際には相当使い勝手が上下するという情報もあるので、まずはDLNAレベルにして、追々OpenHome化を企むのが当家においては現実解であると思われる。

DLNAでは物足りないとなったときには、N-70AとNASそれぞれにLinux Boxをくっつけて、そこでOpenHome対応を吸収させるという解決策は想定しているのだが。いや、もしかしたらNASはNETGEARからSynologyに乗り換えるかな?しかしそんな金が…。

 

 

 

まとめれば「OpenHomeへの将来的な移行を低廉に可能としつつ、まずはDLNA1.5に従った形でデータの保存、再生、制御を運用していくこと」を要件とする(というか、した)。もちろんその要件を受けて実現方法を設計するのも自分なのであるが。

 

という辺りで本日は力尽き申した。続きは明日(か、明後日)くらいに。

 

 

 

で、最近恒例化してきた、本日の一枚的なもの。 

昨日の一枚から細い糸がつながっていて、それはカヴァーということ。といってもBrazilをやってるよ、というシンプルな話ではなくて、もうちょっとこじれている。

人の曲でも構わずやるというのはロックの人には割合に珍しいのだけど、その珍しい人(バンド)に例えばSantanaがいる。カヴァーばかりのアルバムを出したのもそうだけど、実は昔からマイルスをやってみたり、ジョビンをやってみたりしていたのだ。そう、今日の一枚はカヴァーされた側のほう。ジョビンがStone Flowerを出したのは70年。サンタナがカヴァーしたのがキャラバンサライだから72年。面白い辺りを狙ったなサンタナ、と思いつつ、でもカヴァーしたくなった気持ちもなんとなくわかる。キャラバンサライの流れの中にはまり過ぎているのだ。

その表題曲を含む本アルバム(アルバムタイトルもStone Flower)、ジョビンのなかでも一、二を争う出来ではないか、と思う。まさかそんなところから歌い出すなんて、と聴いている側をくらっとさせるBrazilにしても、ジョビン以外には出来ないであろう軽みにあふれている。さすが空港に名前を残す男は違うぜ。

未聴の人は損をしていると言っても過言ではない、そのように断言する自分にためらいを感じさせない一枚。アマゾンのレビューも全員星5つという、まあちょっとあり得ない状態。それを聴き直すチャンスに恵まれた今日は、(幾分なりとも)よい日なのだと記録に残しておこう。