all things must pass

記録と備忘録による自己同一性の維持を目的とするものです。

2/1 金沢市の家庭ゴミ処理の有料化によせて(その2)

続き物にして良いとなれば気も楽になる。加えて、今日は出張で都内泊なればやることもなく(まるで普段はあるようだが、少なくとも家事はある)、のびのびと続きが書けるというものである...他のサスペンド中のものは?という自問には耳を塞ぎつつ。

 

 

1.制度の趣旨および立て付けはどうだろう?

まず事実関係の整理から。市が提供する説明を出発点にする。

家庭ごみ有料化制度(平成30年2月1日開始)

 

冒頭の文章で、本制度の必要性が述べられている。これを抜粋して整理してみよう(強調は筆者)。

近年、家庭ごみの排出量は、ほぼ横ばいで推移しており、また、資源化率も非常に低い水準にあります

  ⇒ ①. 根拠(固有の事情)

家庭ごみ有料化制度は、先行導入自治体で減量化・資源化に一定の効果が認められており生ごみの堆肥化や古紙回収などと組み合わせて実施することで、市民や事業者の環境意識が高まり、ごみの減量化や資源化率の向上に相乗効果が期待できます。

  ⇒ ②.根拠(先行事例)

 

この制度を導入することにより、費用負担の公平性の確保が図られ、ごみの減量に伴うごみ処理経費の削減をはじめ、今後建て替えが予定される東部環境エネルギーセンターの建設費の削減や戸室新保埋立場の延命化など、将来世代への負担軽減に資するとともに、過剰包装等に対する消費者の意識が高まることにより、販売者や生産者の意識改革にもつながります

  ⇒ ③.メリットの提示

 

事業系廃棄物の処理手数料の見直しや事業所等への指導強化に取り組むなど、事業系廃棄物の更なる減量化・資源化にも努めていきます

  ⇒ ④.コミットメント

 

 さあ、要旨をコンデンスしてみよう。以下のようになるだろうか。

  1. 評価指標家庭ゴミの排出量を減らしたいし、明確に低い資源化率も向上させたいです。
  2. (ところで)有償化を行うと減量や資源リサイクルが進むという結果が先行自治体で出ています(から、決して根拠の無い事じゃないよ)。
  3. (それをやると)費用負担の公平性の確保が図られ将来世代への負担軽減と販売者や生産者の意識改革も行われます(から、みんなに資するよ)。
  4. (もちろん我々も)事業系廃棄物の更なる減量化・資源化に努めるよ。

  

家庭ゴミを減らしたい、資源化率も上げたいというのは、願望としては判る。そうなると良いよね、世界は平和だと良いよね、みんな幸せだと良いよね。ところでそれは優先度:高の問題なのだろうか。それが判らない。「数字的なインパクト」を適切に述べて、解決しようとしている問題の規模を議論のテーブルに載せるべきなのだけど、しかし金沢市は残念ながらそのような配慮(情報開示)を行っておらず、優先度が判然としないままである。優先度?そう優先度。行政の有限のリソースを使って対応すべき問題のうち、本件が喫緊であるという根拠が欲しい。
仮に家庭ゴミの削減/リサイクルが優先度:高の問題だとしたとき、どうやると達成できるのだろう。考えられるパスはおおよそ以下の通り。

  1. 可燃ゴミの分別徹底による、他科目への振り替え。たとえば当家の流行である「可能な限り、廃プラや雑紙(ざつがみ)に振り分ける」などが正にソレ。
    この手間を実施するための(負の)インセンティブがゴミ処分料で、それは確かに効くだろうし、即効性もあるだろう。何しろ当家がその根拠の一つだ。
  2. 「市民」が過剰包装を拒否することによる、ゴミの根源的な削減。ゴミ処分料を負のインセンティブとして市民が「上流への転嫁」を行うことを期待するものだ。先行事例の分析では、これも確かに期待できるそうだが、しかし時間はかかるとのこと。まあそうだろう。
  3. 生ゴミの堆肥化による再資源化への取り組み。この手法は各家庭への負担が発生する(設備を買わなきゃならない)事よりも、一律実施とはいかない(みんながみんな、場所があるとは限らない)事の方が問題だ。ゴミ処分料とのバランスによっては設備の購入が合理的になりうるが、設置できない(設置できたとしてもニオイなどを回避するための十分な距離が取れない)などになると、ゴミ処理の大原則である「公平な負担」が毀損されてしまう。

まとめれば、1.および2.については効果が出せそうと言うのが先行事例の結論。たとえばこのような研究もある。

 

[ごみ処理の有料化に関する調査報告]

https://ci.nii.ac.jp/els/contentscinii_20180131234141.pdf?id=ART0008218197

 

これに限らず ”ゴミ処理 有料化 効果 研究”  で検索すると、それなりに研究も、メタアナリシスも見つかる。効果があるということについては大体一致している。二、三年後に慣れによるリバウンド(ゴミの量が戻る)の有無については意見が分かれているが、有ります派も意識付けの問題なので上手く施策を考えろ、程度のトーンでリバウンドがあるからダメだということは言っていない。

余談だが、上記と全く異なる結論のレポートを見つけた。

http://www.k-shin.org/wordpress/wp-content/uploads/2016/11/thesis_current_1.pdf

しかも上掲の[ごみ処理の有料化に関する調査報告]を引用しつつ、恣意的な仮定をおいて、全く異なる結論に持っていくというのは...アタシの書いてる散文と同じ程度の粗雑さだ。どうなのよ、経済新人会。

 

対して3.については、気持ちは分かるが実際には無理だろうという感じ。「家庭生ごみ堆肥化モデル事業」というキーワードで検索すると様々な自治体の取り組みの結果が見つかるが、歯切れが悪いか、さもなければサッパリと諦めているかの二通りである。なぜ歯切れが悪いかというと、作った堆肥の出口が見つからない事に加えて、費用がかなりかかる事が挙げられる。「再資源化」という枠組みで生ゴミの減量を図るのは無理があるのでは、というのが所感である。生ゴミの質量の80%が水分だというのは運ぶにも、燃やすにも負荷が大きすぎるというのは判る。「生ゴミからの脱水」(による重量の削減および燃焼効率の向上)に絞って、みんなが到達可能な目標と手段を設定するのが現実解ではないかと思う。

 

ということで、1/28 金沢市の家庭ゴミ処理の有料化によせて(その1) で述べた結論の1番目、

  1. 制度の趣旨、特にスタートポイントは心情的には理解できなくもない。しかしソレを行うべきかという判断をする根拠が示されていない
    先行事例を調べたところ、制度自体は一般的なもので費用も全国平均程度。であるので、制度の出発点である「ゴミを減らしたい」が 本当に 金沢市にとって喫緊の課題なのだとしたら、それほどの悪手なのだとは思われない。

が導出される。

 

さて、ホントに喫緊の課題なのだろうか。そこの説明がなされてない(※)というところに瑕疵をみる。アタシはWhyの共有(もしくは共有できないことの共有)が合意形成の根幹だと思う立場であるので。

それに、もしかしたら実はそれほど喫緊の話なのではなく、何となくやるべきかもという空気があったのではないか、そんな妄想をかき立てるネタが無いわけでもないのである。

次回は、その妄想のネタを含む法的な背景や、他の自治体との差違を軸に、金沢市の家庭ゴミ処理の有料化について理解を深めていった経緯を記す。

※一旦は空気を振動させたのかも知れないが、その記録は公開されていない。

  

 

いや、(その3)も半分以上出来てるんで、サクッとアップしますよ?

明日の帰りの電車で完成させるのです。新幹線で東京、金沢が近くなったとはいえ、二時間半もあるのだから、何とかなるのです。多分。