all things must pass

記録と備忘録による自己同一性の維持を目的とするものです。

2/7 スゴい雪、自宅で仕事

今近来まれにみる降雪量に麻痺している金沢市であるが、どうやら56豪雪(昭和56年に当地を襲った豪雪)以来というレベルに達したらしい。早速平成30年豪雪 - Wikipediaなどというのも出来ている。

しかも昭和56年とは異なり、冬は雪が降り積もるものだという常識も、供えも、もちろん対応ノウハウも散逸している平成30年であれば、都市機能のマヒの具合は昭和56年の比ではない。なんとなれば、そのときに学校が閉鎖されたという記憶が無いのに対して、今回は小中学校、高校も休校が続出しているようである。

www3.nhk.or.jp

記録的な大雪の影響を受け石川県の多くの小中学校が7日の休校を決めています。
これまでに休校を決めたのは、小松市、加賀市、能美市、野々市市、羽咋市、かほく市、津幡町、中能登町それに川北町のすべての公立の小中学校と高校の115校です。
このほか▽金沢市の42の小中学校、▽白山市の20の小中学校でも休校を決めています。

 

かく言うアタシもオフィスに行かずに、自宅で作業をしている。バスは辛うじて走っているのだけれど、幹線道まで出るのが大変なのだ。これでも市内均一料金区間内なのだが(ご存じない方向けに補足しておくと、金沢市内のバス市内均一料金区間は市の面積に比して驚くほど狭い)、表通りまで出るための苦労は只ならぬものがある。昨日はどうにもならない用事があってオフィスに出向いたのだが、途中で雪にはまり込んで動けなくなっている(遭難したともいうな)老人を助けたり、スタックしてしまった車の後ろを押したり、融雪装置からの水がたまって突然出現した深さ15cmくらいの池を避けるために大幅に回り道をしたり(道路一本が丸々池になっていたのだ)、普段なら5分の道が30分にもなってしまったのだ。可能なら引きこもるに限る。

 

そうして、家の前の雪を除けたり、コーヒーを入れたり、パスタをゆでたり、もちろん仕事をしたりして、そのうちに疲れたのでネットをブラウズしていたら、アレアレと思う記事に出会ってしまったので備忘録を残すものである。

(ここまでだらだら書いてようやく本題なのか、というのは我ながらアレだなあと思う。そしてそれは亡き息子にそっくりである。いや、息子がアタシにそっくりなのか)

 

www.recruit-ms.co.jp 

企業には現業、管理、経営の三階層があるとして、このコラムは、現業→管理→経営の順に階梯を上がっていくという日本的雇用・労働慣行を暗黙の前提としている。人材育成・研修をなりわいとするリクルートマネジメントソリューションズとしては、人事部、総務部が社内で人材を育成する事に意義を感じる様に、手を変え品を変え、あおり続けなければならぬのだろうが、しかし経営人材の候補者プールを社内に作って、それを計画的にメンテしていくというのはホントに可能な話なのかね(修辞的疑問文)。

経営人材に必要な正しい資質(Right Stuffだね)が万古不易のものなら、遠い将来のために時間をかけて人物を絞り込んでいく事が不可能だとは言わない(極めて難しいだろうが)。しかし、30年前にエレガントな経営者と、いまこの瞬間にエレガントな経営者は、同じ資質の発露としてエレガントな経営者となった/であるのだろうか?大いに疑問である。いや、可能だと断言する立場の人たちが多数いらっしゃるのはもちろん判っている。しかしそんな事が可能なのだとしたら、なぜ軍でやっているように、士官と下士官を分けることをしないのだろう?同じスタートライン(実際には入社時に色分けがされているようだが)から始めるなど無駄ではないか。選抜して、育てられるというのであれば、それを突き詰めた軍のまねをすれば良い。

 

ところがリクルートマネジメントソリューションズさんにおかれては、物差しが万古不易だとすら言わず、しかし経営人材の選抜と教育を行うべきだと説いている。さあ、その超絶ロジック(ロジック?)を眺めていこう。

第1のステップは、ゴール設定である。自社の目指すビジョンや経営戦略に照らして、「どのような経営人材が」「いつまでに「」何人必要なのか」といった5W1Hを明確にしなければならない。例えば、海外でのM&Aによって成長することを決めている企業の経営者は、海外を飛び回りタフな交渉をする必要があり、体力があることが必須だ。そのため、新入社員から候補者を選抜し、若い経営者を輩出しようとする傾向がある。

すごい、こんなゴール設定、何年持つのだ?中期経営戦略に合致する経営人材のプールを作るなんてこと、本気で言ってるのか?だめだ面白すぎる。もうちょっと引用しよう。

第2のステップは、候補となる人材の選抜である。全社共通の基準を用いて人材の評価を行い、候補者をリストアップする。もし社内に十分な候補者が見当たらない場合には、社外からの人材調達(中途採用)も考えなくてはならないだろう。 

ふむふむ、そうだよね、社内に居なかったら外部から連れてこなきゃならないよね。

だがしかし。

第3のステップは、候補人材の育成だ。手段としては選抜研修が行われることが多い。従来はマーケティングやアカウンティングといった経営に必要となるリテラシーを学ぶことが多かったが、ここ数年は単なるお勉強で終わらせず、実際に事業上の課題を設定したり新たなビジネスを構想するといった実践型の研修が主流となっている。また、研修実施だけで終わらせず、チャレンジングなプロジェクトへのアサインメントや他部門・他事業へのローテーション、海外現地法人への出向といった、候補者の成長につながる異動・配置を継続して行うことが重要である。ちなみに、異なる事業や地域への異動・配置、職種転換は、人材の環境適応力や学習能力を見極めるという「ロードテスト」の意味合いも兼ねている。

え、せっかく外部から連れてきた人も教育(と篩い分け)のプロセスに乗せちゃうの?頭おかしくない?いや、おかしいです。滅多に断言しませんが、これは断言します。頭おかしい。だったら最初からゴールに合致した人間を外部から取れよ。

そして更にひねりは続き、万古不易ではない事を一旦は認める。

もう1つ、経営人材育成の実行を難しくしているもの、それは「不確実性」である。経営人材育成には「将来の」活躍を期待した先行投資の面がある。若いうちから選抜しようとすればするほど、経営人材としてのポテンシャルを見極めることは難しい。本当にその人材のポテンシャルに賭けていいのかどうか分からないなかで、現場の反発があっても異動やローテーションをすべきか。そもそも、「VUCAの時代」(VUCA=Volatility〈変動性〉、Uncertainty〈不確実性〉、Complexity〈複雑性〉、 Ambiguity〈曖昧性〉)といわれるように環境変化が激しい昨今、一度決めた経営人材像が10年後も通用するものなのかどうかも分からない。ここに難しさがある。これは、組織のなかからイノベーションを起こそうというときに直面する難しさと本質的には同じである。つまり、「不確実性が高いなかで資源動員をする」という決断をしなくてはならない。

ああ、そうですか?イノベーションの困難さと同型の問題だと?で?

企業風土や価値観とのコンフリクトを超えて、また不確実性があるなかで資源動員の意思決定をするのは経営者の役割である。そもそも、将来の経営者を育てるのは現在の経営者の責務であり、人事に一任して経営者は報告を聞くだけでは、うまくいくはずもないだろう。さらに、経営者自身が多くの時間を経営人材育成に費やすことで、その重要性が社内にも伝播していく。「経営人材育成を成功させるためには、経営者のコミットメントが必要」だといわれる(図表3)のはこのためである。

はあ、経営者がコミットメントすれば良いのですか?しかしそう書いたそばから、人事起点で経営人材育成を進めることはできるという節が続く。

経営人材育成には経営者のコミットメントが不可欠なのだが、かといって人事は受け身で待っている必要はない。ある企業の人事マネジャーは、グローバル化・テクノロジーの進歩のなか、現経営層が経営判断をしていては勝ち残ることができないと考え、膨大な事実に立脚した提言を経営層に対して行った。退職も覚悟で現経営層にNOを突きつけたのだ。その必死の訴えが認められ、戦略的な経営人材育成を進めた結果、いまでは経営層のほとんどが入れ替わっている。極端な例だと思われるかもしれないが、この例から伝わるのは、人事から経営者を動かし、経営人材育成を進めることもできるという事実だ。

 

そしてこの記事はこう結ばれている。

以上、経営人材育成がなかなか進んでいない状況を「分かっちゃいるけど、やりきれない」と表現して、その要因を考察してきた。ただ、こう言っては元も子もないが、阻害要因や「壁」に目を向けて分かった気になるのではなく、いかに愚直に行動するかに尽きるともいえる。取材した日立製作所でも、グループ会社で40代の社長誕生という大胆な人事が実現したのは、人事が各所に根回しをして合意をとりつけるなど、まさに泥臭く行動した結果であった。

「成功事例を探すだけで何もしないのはもうやめて、そろそろ動き出そう」と思われている人事担当の皆さまにとって、少しでも本特集が参考になれば幸いである。

 

てやんでえ(なにいってやんでえ、の略)。そこらの野太鼓だって、もうちっとうまく座を持たせるぜ。

 

まとめます。

人材育成・研修セントリズムな人たちからすると、リクルートマネジメントソリューションズさんの言ってることは正しいように見えるのかもしれません。でも、そうじゃない立場からすると、これは仕事を作り出すための仕事にしか見えません。いやもっと悪い。人事、総務のような社内官僚が思い上がると大体会社は傾きます。仕事が欲しいからと言って、よその会社に混乱の種をまくような記事をかくというのは、やはり品のないことだと思います。まあリクルートですから、品を求めても仕方ないのですが、しかし品がないと思われる事による損が判らないからこれを書いている訳で、少なくとも頭が良いとは思われません。なんという矛盾。研修屋さんなのに。

そしてこんな馬鹿記事を支えに制度提案をしてくるような人事や総務がいたら(うちにはいない事を期待しますが)、経営サイドの末席に座っている私などはどんな顔をして話を聞くのだろうかと想像してみるのですが、まったく頭に浮かんできません。鬼のような顔でしょうか、能面でしょうか、それともにこやかに応対をするでしょうか。どれもありそうで、どれでもなさそうです。

経営とは隙あらば局所最適を図ろうとする「賢い」人々を使って、組織全体に資する最適化を行うことだ、という定義もあります(というか、いま自分で定義した)。そうすると、そんな人事を使いこなしてこそ経営ということなんでしょうけど、うーん、やっぱりこんな記事に乗せられた提案が出てきたら、難しい顔をしちゃうな。どうしてそうなっちゃうのよ、とか。

そうか、難しい顔をするんだ!