all things must pass

記録と備忘録による自己同一性の維持を目的とするものです。

8/16 いよいよ、CTI

やっとCTIのことをかく。

 

くっそアツい2018年の夏は、楽しさ満載のヤバTと、クールの塊であるCTIばかり聴いていた。CTI、なんとHatena Keywordにも載っているけど、まあWikipediaの解説の方が丁寧だろう。

CTIレコード - Wikipedia

 

音楽の趣味は相当にとっちらかっていると言われるけど、それでも本人的には脈絡がある。というか、その脈絡こそが自分じゃないか。良いものは(普遍的に)良い、なんて馬鹿なことは言ってられない。良いと思う自分がいるから、(自分にとって)良いのじゃないか。とっちらかっているがごとき軌跡は、自分の脈絡を探す運動の痕跡じゃないか。

なんと、大げさな。とにかく、物心ついてからこの方、アレコレ聴く度にやってきた自分のツボの解析の結果として、今年ようやくCTIの扉をたたいたのだった。

 

いや、CTIが自分のツボの結節点なのはもう何年も前から判ってたんだ。アントニオ・カルロス・ジョビンがいて、ウェス・モンゴメリーがいて、ジム・ホールも、デオダートも、ハービー・マンも、ボブ・ジェームスも、ミルト・ジャクソンもいて、おまけにラロ・シフリンまでいる、オーガナイザーの趣味満載の個人レーベルだ。悪いはずが無いじゃないか。「Jazzオヤジ」が嫌いそうな(少なくとも好きじゃなさそうな)人ばかりというのも良い。いまでこそJazzにためらいはないが、最初に聞き始める時には大いに躊躇した。なんとなればプロの評論家から、市井のファンまで、「Jazzオヤジ」がいちいちウザかったからだ。あの「本物を知っているのはオレだけだ」感には、いまだに虫唾が走る。CTIはその真逆なんだろう、というのは所属アーティストから判ってはいたんだ。

 

でも、なんでだろうね、CTIにいくのをずっとためらっていた。21世紀に入って何回かリイシューやリマスターが行われて、2016年には国内盤が一枚1000円で買えるようになってたのも知っていたんだけど。やっぱりアレかね、すでに完結しちゃったレーベルを真面目に聴くというのは墓荒らし(※)のような気がしてたのかしら。子供がいると「教育的な配慮」を色んな局面で、色んな対象について(それこそ自分に対してでも)、自然にやっちゃうようになるものなのかね。趣味性の高すぎるレーベルに惑溺する前にやることあるよね、とかね。

 ※ tomb raider と書くとかっこいい気がするね。

 

それとも若しかしたら、好きなものを好きに聴くという信条だと言いつつも、アーティスト自身の通時的評価とセットで聴いていたのかも知れない。

だって、オレ、ジョージ・ベンソン嫌いなんだもん。

CTI時代がカッコいいらしいという情報は得ていても(ワタシ自身はまだ聴いてなかった)、あのあとのブリージンとか、さらに後のを考えると、やっぱover ratedなんじゃないの? ってことはCTI自体も同様に過大評価なんじゃないの? そういう思う部分があったのかも知れない。

 

 

そして何度も書いているとおり、2017年2月3日に突如として余生が始まり、生きている人も、死んでいる人も区別のない、時間の流れが止まったような、すべてが切断された点の列挙としてしか見えないような、気がついたらそういうところに立たされていました。大仰ですね。でもしがらみ(モノや他者という外部性)が無くなっちゃうというのは、いろんな事を区別する尺度が消えて唯一自分だけが残るということで、そういうのは仕方ないんだと思います。

しかし、それとCTIに何の関係が?

 

 

今年の五月、日本のAmazonでお買い物をしているときにコレをリコメンドされた。

www.allmusic.com

いままで判っていながら避けていた、CTI Recodsのベスト盤四枚組のボックスだ。美しい装丁は、取り上げた曲を収めたオリジナルアルバムのジャケットを集めたもの。それを見た途端、もう良いかと思うと同時に購入していた。墓荒らしでいいじゃないか、背中を見せなきゃならない息子も居ないんだし、通時的な、公正な評価なんかをする義務を背負ってる訳じゃないんだし。聴きたいように聴きちらかせばいいんだよ。だって余生じゃないか。

 

聴いてみれば事前の予想をさらに上回る、自分の音楽的官能のツボを刺激する、でも決してモノトーンではない、アーティストごとの彩りが華やかな39曲が収められた四枚組だった。ええ、これもCTIだったのかという発見があったり。例えば「Tombo in 7/4」とか。

つまり一撃で持って行かれてしまった訳だ。どのくらいかと言えば

ジョージ・ベンソンに感銘を受けた

ことから推して知るべし。ジェファーソンエアプレインのホワイトラビットをやってたんだけど、これがカバーだということも含めて(※)、もう何ともツボで。

※ カバーによって曲のアスペクトが変わるのがタマらなく好きなのです。

 

 

そうなってしまえば、あとは一瀉千里。途中にヤバT(と、「恋の家路(新学期)」)が処理時間を占有した時もあったけど、それ以外はCTI関連を買って聴き、買って聴きを繰り返して現在に至る。今年2018年は嘗て無いパターンの暑さで、人間の好き放題のツケで世界もいよいよ終わりかと思ったら泣けてきた、という夏なんだけど、耳だけでもクールに過ごせたのはCTI様サマだった。CTIについて、所詮クロスオーバーだからとか、軟弱とか、Jazzを薄めただけとか、ムード音楽だとか、...あと何だっけ?...、とにかく「惰弱な偽物」と貶す人々がいるのだけど(そういうレビューはすぐに見つかる)、音楽はラベルをありがたがったり、党派性に殉ずるものではないのであって、

クールで気持ちよいのが聴きたい

という聴者の機能要件を最大限に満たそうとした結果としてのレーベルカタログである事を無視しての悪口って、書く側の頭がどうかしている。正否じゃなくて、効いたか(クールで気持ちよくなったか)、それとも効かなかったかで語れよ、と思うのだ。

(一昔前の左翼の人の批評ってそんな感じでしたよね。今は...もっと劣化しているみたいですが。はっ!「Jazzオヤジ」って一昔前の左翼っぽいんだ。それってつまり、ダンカイ主敵論ということなの? って事は、時間が解決してくれる問題なのかしらねえ。ホントに?)

 

ワタシにおいては、レーベルオーナーであるクリード・テイラーの意図するところが十全に発揮されていて、どれを聴いても、もうそれは堪らなくクールな気持ちよさを満喫している。それが可能な理由の一つとして、ドン・セベスキー、ボブ・ジェームス、デイヴィッド・マシューズなどのレーベルお抱えアレンジャーによる水準コントロールというのがあるのだろう。あくまで水準コントロールであって、統制ではなさそうというのがポイント。もし統制なのだとしたら、最初に買った四枚組ボックスのカラフル感はありえないだろうし。

だけど、このレーベルの看板プレイヤーでありながら、よく見れば糸が繰られてそうな奴が一人いる。ジョージ・ベンソンだ。ドン・セベスキー、この人こそジョージ・ベンソンという人形を操った傀儡師であって、彼なかりせばジョージ・ベンソンウェス・モンゴメリーエピゴーネン(なつかしいね、エピゴーネン!)に過ぎなかったに違いないと睨んでいる。

二人の組み合わせはThe Other Side of Abbey Road - Wikipediaから始まるんだけど、調教の一回目ということでジョージ・ベンソンに何が出来るのか、ドン・セベスキーが性能測定をしているという趣があって面白い。作品としては...世評は高いみたいだけど、個人的にはいまいち。Abbey Roadに思い入れが深いというのもあるけど、まだドン・セベスキーはジョージ・ベンソンを鳴らし切れていないし(!)、その為に必要なアレンジメントのそろばんが合ってない。ベンソン、セベスキーの最高傑作は、CTI初期のカタログであるWhite Rabbit (George Benson album) - Wikipediaにとどめを刺す。

ともあれ、レーベルが傾く後期になるとジョージ・ベンソンは自身の色を強め、このあと凡庸な道を歩んでいくことをひしひしと予感させている(つまり、個人的には嫌いとまで言わしめる方向性の萌芽がある)。逆に見れば素材としてのアーティストを頼れるアレンジャーを介してコントロールしてでも、所期の目的を実現することに注力していた当初のクリード・テイラーの姿が浮かび上がってくるようである。

もちろん多くのアーティストはそこまで統制されていた訳ではなく、CTIを理解した上での創作活動だったのだと思うし、それが故のカラフルさなのだと思う。でもセベスキーがベンソンを鳴らしきる事を期待したクリード・テイラーの業こそが、CTIのコアだし、それがあってのクオリティなのだ。...断言していいのかね、そんなこと。

以上は、根拠の薄弱な、個人の感想です」これでいいかな。

 

いつものごとく長くなってしまった。いい加減まとめよう。

 

オーナーの夢想の結晶のような個人レーベル(ロック系だと、例えばマイク・オールウェイの él Records みたいな感じ(※)。こっちも勿論素晴らしい)、最高だけど、長続きはしないみたいで、CTIもその例に漏れず1970年から1978年までのたった8年間しか存在していない。でも、長く続くことだけが価値の尺度じゃない。数は多くなくても「強い」カタログは、クールと気持ちよさを求める人がいる限り、忘れ去られることはない、と思うよ。何度でも甦るさ。

※ こんな記事を見つけたので残しておく。すばらしい。

www.theguardian.com

 

というわけで、いよいよCTIの扉を開いてしまった。

この後、さらにどこにドリフトしていくのかはよくわからないけど、また一つ自由になったのだなあ、と思うことであるよ。

 

 

追記1

ちょっと調べたら、CTI時代のジョージ・ベンソンの代表作というと一般にはGood King Bad - Wikipedia(※)みたいね。うーん、これは合わないんだよな。次回作がブリージンで、CTIを出てっちゃうというのがよくわかる。ジョージ・ベンソンが好きな人は、ジョージ・ベンソンが好きなんであってCTIにはあんまりこだわりが無いのかねえ。そうかもしれない。

ところでこのアルバム、ドラムにアンディー・ニューマークが入っている。このあとAvalon (Roxy Music album) - Wikipediaに向かっていくのかと思うと、それはそれでアツイものがある。調べて良かった。

 

 

追記2

70年代のJazz周辺(非メインストリームということ)をちょっと調べようと思うと、映画やTVのサントラというのが欠かせない。

当時のTVもので曲として印象に残っているものというと、イギリスのITCもの(CTIアナグラムになってて草)を除くと、「600万ドルの男」かねえ、やっぱり。

すでにサントラは廃盤で、Youtubeに上げられた音源が聞けるのみ。タイトル曲はジャズファンクっぽいもので、全般にJazzの影がある。

 

うーん、ということで、調べてみることに(これもwikipediaだよ...)。

The Six Million Dollar Man - Wikipedia

 

音楽はオリバー・ネルソンさん。

Oliver Nelson - Wikipedia

やっぱりJazz出身でした。この時期のアメリカはJazz流れが多かったみたいですね。

なんと刑事コロンボの印象的なテーマ曲もこの人だったという事が判明。しかもJBのアレンジもやってるっぽい。

 

この辺りの時代背景を調べて見たい感じがちょっとしてきた(調べる道筋の検討から始まりそうであるけど)。今日現在の気持ちとして記録に残しておこうかね。

明日、同じ気持ちなのかは置いておいて。