11/3付けの北國新聞朝刊に面白い記事があったので、そのメモを。
全国学力テストの市町村別平均正答率で、加賀地区において県平均を5%以上上回ったのは川北町のみで、その原因を同町の教育委員会に問うてみたという記事だ。要約してみよう。
- 小中学校に対して、国や県から、連日のように調査依頼書が届く。内容は学校設備の状況、修学旅行など様々。同町の小中学校は4つに対する年間の依頼数は400件にのぼる。
- これを「中学校の教員時代に多忙を強いられた中で、大きな負担になっていたのが各種書類をまとめることだった」とする同町の教育委員会課参事が、可能な限り教育員会で回答代行する業務改革を発案した。
- その結果、同町の小学校校長は「前任校と比べ、驚くほど調査要請が少ない。負担軽減で生まれた時間を教材研究や授業準備に充てることができ、大変助かる」と延べる。
※以下、実際の教育現場での取り組みの紹介が続くのだが、そこは割愛。
大変に面白い。その面白さをまとめると以下の通りだ。
- 学校の先生の残業が多い理由、実は部活動よりも文科省からやってくる各種の調査要請が原因だ、ということを現役の人からよく聞いていた。しかし教員の労働条件改善がようやく取り沙汰されるようになった最近でも、そこがメディアで取り上げられることは、ほぼ無かった。何なのだろうね、これ、と思っていたのだけれど、本記事ではそれがさらっと取り上げられている。
※調査要請は家に持って帰るという話も聞くから見えにくいのかね。 - その先生の首を絞めている調査要請、文科省のみならず県なども追い打ちを掛けていたのかとびっくりする。調査要請に対する想像力のなさ(この塵が積もったときの山の高さは如何ばかりかと考えてみる力のなさ)は、国も県も同様なのだな。いかにも役人である。
- この記事は、調査要請で疲弊する現場を教育委員会が助けようとする事がレアであるのを間接的に語ってしまっている。Newsとは、常ならざる事だ。教育委員会が現場を支援するのが当たり前ならNewsにはならない。記事になること自体が、本件がまれな事である証拠である。
- そして、その教育委員会だが、現場との間で人材が行き来している事は一般常識として誰もが知っている。すると、普通の頭を持っている人なら気がつくはずだ。「あれ、どうして本件がレア事象なの。教育委員会が現場の困ったことを知っているなら、普通助けるものじゃないの?」
ワタシもそう思う。なぜ、これがレア事象なのだろう?
約10年前、県の教育系から某私立高校の事務長に天下った人と話したときに、とんでもない事を言われたのを思いだす。
「先生には残業手当が付かない。これは法律で決まっています。だから先生は何時間働いてもいいんです」
昨今の流れから「先生は何時間働いてもいいんです」とは最早言えない。だから本件のような改善も出てきたのだろう。
とはいえ、先生の残業代が支払われないというのは、雇用側に業務改善の(負の)インセンティブを負わせていないということだ。3、4に対する答えは
「先生の残業を減らしても、管理指標上の差違は現れない。だから現場のことは判っていても、今現在の自分の仕事を増やしたくない、(無駄な事をしたとして)評価を下げたくない等の理由から何もしない」なのではないかと見る。学校から出向して腰掛けでやっている人などだと特にそうだろう。
まったくげんなりする話だが。
とすると、先生に残業代をきちんと払い、雇用側が痛みを感じれば、状況は動き始めるということなのだろうか。以前から実はそう思っていて、本件記事はその傍証となる話だなあと思って読んだのだった。
もちろん、残業代を払う以上は勤務評定も、業務能力の査定が行われるようになる。そして先生にもランクがきちんとついて行く、筈だ。ただの労働者だもの、ちゃんとランキングしなきゃ(※)。
※今の人には信じられないだろうけど、ワタシが中学校に入った頃、教員の能力評価に反発した教員たちはストライキを結構やっていたのだ(当時の争点は主任制の導入だったかな)。自分たちは成績をつける仕事なのに、自分たちがつけられるのはゴメンだぜ、というのは中学生にも感じ入るものがあった。
しかし依然として謎は残る。
どうして川北町ではそれが可能だったのだろう?
あくまでも個人によるのか?それとも町自体に、それを可能ならしめる何かがあるのか?
それを調べるのは今後の課題として、とりあえず今日はここまで。
会社行かなきゃ。
追記
以下は今後の考察用の備忘録。川北町のFigureが気になったので調べてみたところを残しておく。
企業誘致で潤っているという話を耳にするが、財政力指数はそんなに高くない。県が出している資料をみると、将来負担利の異常な低さが目に付く(※)。さて、川北町に特徴があるとしたら、それはどこに現れるのか、それは今後のお勉強ということで。
※議員、役人の給与の額の低さが目に付くが、突出しているという訳でもない。むしろ財政が悪化している七尾市などが未だに給与が高いままな所に驚いたりしている。
http://www.pref.ishikawa.lg.jp/sichousien/documents/shityou_kenzenka2018.pdf