大物案件が成功裏に完了してようやく平常運転に戻ったので、たまっていた各種記録の整理をせねば。
ということで、まずは長野に行ってきた記録の棚卸しを。
なんともう二ヶ月近く前のことじゃないか。アカンがな。忘れる前に、少しでも残しておこう。
以下、思い出すまま、雑駁にだらだらと綴る。
拠点とした宿は、長野市のJALシティ。駅周辺と善光寺の中間くらいのところにあって、どちらにも歩いて行こうという身には都合がよいのだ(その日の朝に予約をする訳じゃ無いから天気が悪い場合のことも考えるよね、普通)。
そのJALシティ、地下駐車場の一角の盗難防止用の柵の向こうに、ハイエンドなロードレーサー多数がハイエンドなカーボンディープリムホイール多数そして何台かのローラー台と共におかれていたのがとても印象的。帰りがけに係員のひとに訊ねたところ、スケートの小平選手などが合宿をしているとのことだった。午前は氷上を滑り、午後は自転車で走る、だったかな?そんなメニューを送っているのだとか。なるほど。
立地で選んだJALシティだが、フロントの態度は十分に悪く(なぜ初手から居丈高にでるかね?)、壁は中々に薄く、設備は存分に古く、宿の選択を間違ったなあというのが結論。いや、立地はいいんだけどね。しかし観光客なのであれば、思いっきり観光客っぽく振り切って、善光寺門前の宿坊に(も)泊まるべきであったかと反省したりもした。観光客としての次回があれば、是非そうしよう。
善光寺はさすがにご立派であったのだけど、一番印象的だったのは実は寺じゃない。長い石畳の参道を善光寺に向かっていたときにすれ違った、寺の方から歩いてきたラテン語族のおばちゃん二人組に善光寺No.1を持って行かれてしまった。
何事かに激高している様子の、小柄だが然しゴツいおばちゃんは、もう一人のおばちゃんに「Liberté! Liberté!」と大声で叫んでいる。何に憤っているのか知らないが、しかしどう見ても憤っている態度だ。隣のおばちゃんも、何とか取りなそうとしているし。一体寺に何があるというのか?
参道のどん詰まりまでいってみたが、もちろん判ることは無かった。
そして未だにあの「Liberté!」が耳に残っている。自由がないと叫びたかったのか、それとも自由すぎると怒りたかったのか。でも何が?
あとびっくりしたのは、善光寺では七五三をやっているのだね?(あんまりびっくりしたので写真も撮った)。ありゃ神道の営業メニューだと思っておったよ。これが印象に残ったNo.2。
そして当の善光寺だけど、これについては「浅草寺と似てるなあ」が感想。どうにも観光旅行に向かない体質らしい。名刹を訪れといてこれなのだから。
食事の事も記録に残しておこう。
付いた初日の夜、昼に十日町で食べたそば(※)がまだハラに残っていてあんまりやる気もなかったんだけど、それでもせっかくの旅行だからと、日曜で休みの店も多い駅周辺を腹ごなしを兼ねてうろつくこと小一時間。やはり気配は漂うモノで、それをたぐって、暗い通りの更にその奥にある店を引き当てたのでございます。
その店の名は「蕎麦旬菜こすげ」。
※これは家人と息子が一緒にいった店にワタクシも行ってみたいというセンチメントから。結論から言えば失敗。ハラがくちくなったときに、あとは頼むぜと言える若い力と一緒に行くべき店なのだね。
畏るべき店でした。何の予備知識も持たず入ったのだけど、酒、つまみ、そば、どれも恐ろしく丁寧な仕事に圧倒される。例えばハイボール一つとっても、ちゃんとしたバーのハイボールだ。酒の品揃えもいい。つまみの鴨の焼き具合も絶好。そして、どうして自家製のコンビーフがあるのだろう(ローストビーフを出す都合か?)。これの牛の脂の甘みのまとわり付き方がハイボールにとても合うのだ。
そしてもちろん蕎麦。もりとカレー南蛮(!)を頼んだのだけど、どちらも畏るべし。香りがあって、甘くて、喉ごし(と喉ぎれ)のいい蕎麦と、それにジャストの汁だけのもりも素晴らしいが、カレーというよりはガラムマサラ南蛮とでも言うべきカレー南蛮には恐れ入ってしまった。移動で疲れた体が、その畏るべきカレー南蛮で一気にほぐされてしまったのだ。
惜しむらくは、昼のダメージがまだ残っていてフルスイングで食べられなかったことで、この店に行くためだけに次の長野行を計画してもよい(いや、出張の帰りに途中下車するとか、等など)と思う事しきり。そして大いに飲み、かつ喰らうのだ。
いいなあ、長野。
ちなみに、店を出るときにごちそうさま、おいしかったですと声をかけると素晴らしい笑顔で送り出してくれたご主人、後でネットで調べれば善光寺は仁王門そばの小菅亭という鴨南蛮が有名な老舗のご子息らしい。なるほど、であれば鴨の扱いも手慣れたものか。やはり次の長野行は急がねば。
その翌日には、積年の課題であった上田の刀屋さんにも行った。最初にその存在を知ったのは30年前。以来チャンスをうかがっていて、ようやくの訪問である。
蕎麦の盛りは小、中、普(普通)、大の四段階。ここは盛りがいいことでも有名であり、大が大変なことになるのは言うを待たず、普も中々大したことになるようなのだ。とはいえ食べ終わったあとにもうちょっと欲しかったというのも業腹だ、ええいなるようになるさと、普と天ぷら(ここではちらしという)を頼む。
...昨日もそういう事を言っててはまったんじゃ無かったっけ?
しかしさすがは刀屋さん、うまいうまいと食べている裡に、蕎麦の山も、天ぷらも、きれいに腹中に収まってしまった。してみると昨日のアレは、息子の不在だけではなかったのだなと気がつく。そうかますます足が遠くなっちゃうな、十日町。
30年ごしの宿題が、よい結末を迎えて大満足。お店の人の親切な感じも素晴らしかった。ここもまた来たいね。
他にも色々食べたけど、あと特筆しておくべきなのはここかな。
レストラン ヒルトン (トリップアドバイザー提供)
長野市に入る時、ロードサイドにその看板を見つけて、結局帰りに立ち寄ってしまった。
だって「常に洋食界をリードする」だよ?
結論的には良いお店でした。11:30ごろに入ったんだけど、その時点のお客さんで最年少なのは多分ワタクシ。つまりご高齢の方がとても多いお店だったのです。1970年創業ということは、地方におけるロードサイドレストランの勃興期ですな(件の看板は2015年に作ったということですね)。その頃からのお客さんが一緒に年を取ったという感じ。
お店のしつらえも同じく一緒に年を取っているけど(そしてそのことについてブツブツ言っているレビューを目にするけど)、ワタクシ的にはそれはそれでOK。なんとなれば、ワタクシの外食人生は、幼稚園の頃にあちこちのこの手の店に連れ回されたことに始まっているからで、まさに原点という感じなのですよ。思い出補正ということでもあるわけですが。
ただし、単なるノスタルジー、もしくは同時代性だけで今日までやってこれた訳がないのであって、料理の味はしっかりしている。ファミレス料金を期待されると困っちゃうけど、そこそこの値段できちんとしたものを出すという方針でずっとやってきたんだろうなというのがハッキリと判る。メインに信州オレイン豚ロース肉 ポークカツレツというのを頼んだのだけど、付け合わせのサラダや、カツレツにかける二種のソースにも工夫があった。別に頼んだ牡蛎のグラタンも、表面のお焦げ(グラタンというかグラチネ)がカリッとしていて、中の牡蛎とのコントラストがいい。
そのうえで、いまなおクラシカルなサービスをそのまま供しているのが泣かせるところだ。そこはやっぱりこの店の売りなんだと思う。スープなんか、ウエイトレスのおねえさんがテーブルに置いたお皿に一杯分づつ給仕してくれるんだよ。牡蛎のグラタンを頼んだら、メインの前に順番に持ってきてくれるんだよ。往年のロードサイドレストランのサービスを、しかも若いおねえさんが供してくれるというのは、幼稚園児の時に、背筋を伸ばしてナイフとフォークを使ったのを思い出してしまうね。
そうこうするうちに12時を過ぎて、勤め人の人たちがランチを食べにやってくる。彼らが注文するのは千円前後のランチ限定メニューのようだ。なるほど、客層は一色ではないということだね。ワタクシを含めて11時台に入ったお客さんは、おおよそ「本日のランチ」ではないものを頼んでいたのである。
ここもまだまだ続いて欲しいなと思いつつ、そう遠くない店の建て替えをどうするのだろうと人ごとながら気にしてしまう。どうだろうね、建て替えてなお続けられるのだろうか?でも太いお客さんはワタクシよりもさらに年かさなのであって、それを当てにして新規の投資をするというのは辛いよなあ。
うまい、うまいと思いつつ、結局は商売の目で見てしまう。因果なことである。
あとはホントにメモランダム。
長野市に入るまでの道が片側一車線だったり、都市部に入っても道がナチュラルに曲がっていたりで、知らないと結構走りにくい。その反動なのか、ドライバーはみんな親切で譲り合いが徹底している。スゴく良い所だなあと思った。マジで好印象。
(ちなみに同じ県内の松本はXXXXらしいです。Oh...)
ガソリンが金沢より15円以上高いのにびっくり。考えてみれば、タンカーを着ける港が無いのだから、陸路で運んで来なきゃならないよね。信越線で新潟から貨車に載せてくるのかな。その分の運賃が乗っかるのは仕方がないということか。
長野市の最低海抜が330メートル弱というのにびっくり。そうか、そうだったのか。ちなみに長野県全体での最低海抜が250メートルくらいらしい。スゴいな、山のなかなんだ。人生の折り返しを過ぎてようやく得心するというのもアレだねえ。
まあ、そういうのが旅行の醍醐味なのだろう。義務教育の社会科や地理の時間で学んだことは只の情報だけど、こうやって出かけてみると、なるほど教科書に書いてあったことってこんな事だったのか、とリアルにつながってくる。
引きこもりで出不精だけど、たまにはこういうのも良いなあというのがまとめとしての感想。
そして、小菅はもう一度行かねば、と。