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記録と備忘録による自己同一性の維持を目的とするものです。

9/1 「日本の人事部」、これは...。

日本の人事部とはココ。

jinjibu.jp

 

面白そうな資料があったのでダウンロードボタンを押下したところ、

ご登録内容を確認次第、資料ダウンロードの可否をメールでご連絡いたします。
今しばらくお待ちください。

 

というアナウンス画面に遷移した。

おやおや、資格審査があるわけだ。

 

さてこの資格審査、「日本の人事部」に閉じて行われてるのなら何も問題無いのだが、これが資料の提供元であるSmartHRに一旦データが渡って行われているのだとすると、個人情報保護ポリシーの書きぶりはちょっと注意しなければならないだろう。

 

さて、実際にはどうなっているか?

プライバシーポリシーを見てみよう。

jinjibu.jpここには利用目的として以下が掲げられている。

会員が掲載企業へ問い合わせ、資料ダウンロード、またはセミナーの参加申込を行った際に、当該掲載企業に会員情報を提供するため

 

利用目的が「会員情報を提供するため」となっているのは根本的にセンス無いとは思うけど、今回気になるのはその手前だ。ダウンロードの申し込みではなくて、ダウンロードという行為自体が条件になる書き方をしている。

とすると、ダウンロードが拒否された場合はこの条に適合しないことになる。

 

さて、「日本の人事部」の行うダウンロード可否判断は社内に閉じているのだろうか、それとも当該掲載企業までつながっているのだろうか?

なんだか気持ち悪いなあ、ダウンロードさせてやらない、と言ってきたら、お便りして個人情報の扱いについて確認してみたくなってしまうではないか。

面倒なのでおそらくやらないけど、しかし気にはなるのだ。

 

 

とここまで書いて、もう一度ダウンロード画面を見直してみると、末尾にこんな注記がある。

 

※資料の不正利用防止のため、事務局によるご登録内容の事前確認がございます。1~2営業日中に確認を行い、資料ダウンロードの可否をメールでご連絡いたします。
※掲載企業及び取り扱い企業にあなたの会員情報が送信されます。あらかじめご了承ください。

 

 

 

これはまったくダメですな、第三者提供に関する告知の仕方をまったく理解してない。リーガル通したとは思えない文言である。

個人情報保護法が面倒なのは、個人情報に関しては契約自由の原則が適用されない(=了承したからOKなのではない)からであって、法の縛りに従って告知をせねばならんのだけど...。

 

ただ「日本の人事部」はPマークを取得している(!)ので、よって2年に一度更新があり、その際には文書審査、現地審査がある(そして結構面倒なのは、弊社もそれに対応しているからよくわかっている)。そのときに突っ込まれるとは思うのだが、しかし審査員もピンキリだと聞くしなあ...。

 

 

まあいいや、ダウンロードの審査というのは今まで見たことがなかったものだし個人情報保護法との相性が激悪なので、とてもとても驚いたということは記しておこう。

まあ、ありえないレベルだということで。

 

 

 

あ、そうだ、もう一つ本件に関して記したおかなければならない事があった。

それは「日本の人事部」的な、会員制情報提供サイトのマスクをかぶったWEBマーケティングサイト(以下、生け簀サイト)を運営するビジネスモデルに秋風が吹き始めているという予感だ。

 

ダウンロードの審査云々は、生け簀サイトから生成されるリードの質が低い(=せっかく入手したリードリストに対して手間暇を掛けても、そこからのコンバージョンが上がってこない)という事がばれ始め、少しでもリードの質を上げる必要に迫られた生け簀サイト側が導入した新機軸に見えて仕方がないのだ。

「不正利用」とは片腹痛しであって、そんなレベルのエサをそもそも撒いていないだろうに。

 

例えば電子カルテなどのように、

  • ある程度以上の単価があって、
  • しかも先進的な顧客はもう導入が一巡していて(それどころかリプレース合戦もアタリマエになっていて!)、
  • ところがそこから落ちこぼれている未導入の中小の病院・施設があって、
  • そんなところも国の施策によって電カルを入れなければならない圧力がかかっている

などというマーケット状況であるならいろいろとやりようがあるんだけど、「日本の人事部」を生け簀サイトとして使うタイプのビジネス(製品およびサービスの販売)は、結局のところ「会社向けコモディティー」の提供に他ならず、リードそれぞれの事情に食い込んだ「提案」なんかをしている余裕がない。単価も多寡が知れてるしね。

 

今現在、ビジネス向けのクラウドサービス(会計系のあそことあそことか、HR系のあそことかあそことか、CRM系のあそことか)は、だがしかし、生け簀サイトによるリードジェネレーションと、それを受けての電話を使ったリードナーチャリングで何とかしようとしている。

だから資料をダウンロードすると間髪入れずに電話がかかってきて、10分~15分くらいそれっぽい話をして、では何かありましたらよろしく、という無駄な時間が毎回発生していたのだ。*1

 

 

だってこっちは資料が欲しいだけなんだもの。

検討はゆっくりしたいんだもの。

テレアポのオペレーターがぞんざいなスクリプトベースでセールストークをしても、心に何も響かないんだもの。

プラスの評価はゼロに、ゼロの評価はマイナスになるだけなのよ、しかも自殺点で。

 

 

思うに「会社向けコモディティー」をWEBマーケティングと、それに続くテレアポ軍団で売ろうという発想がそもそも間違いなのだと思う。

コモディティーに提案無し」なのであって、マルチチャネルで見込み顧客への接触を図るのはコモディティー販売のお約束だとしても、その際WEBマーケティングはブランド浸透にとどめるのが吉であって、そこでリードジェネレーションをしようと欲をかくのはどうかと思う。あれこれ見比べて買いたいのに、資料を引っ張っただけでグズグズ電話をされると買う気まで失せてしまうではないか。

そういや本当に「売る」店員さんはのべつ幕無しに声を掛けるなんてことはしないのだそうで、そころが「会社向けコモディティー」であるクラウドサービスを売っているところはその真逆をやっているのだ、揃いも揃って。

 

いや、本当に判っている会社はそんなことはしない。

SFAと言えばアレという某社はセールスはパートナー会社にまかせ、自身は情報発信とブランド向上に努めている。サイボウズだって、ファンの力をつかって情報を増幅発信する事に力を入れている。

いずれも手厚いリードナーチャリングで売るのではなくて、ブランド+製品のエクセレンスという王道と、製品に適した販売網で供給することの組み合わせで商売している。

 

しかし生け簀サイトを使っている会社はその真逆だ。

頭が悪いことに理由はないので、まだ使い続けている理由を考えていても仕方がない*2のだが、「コストに見合った成長」が得られないと観念する日はきっと来る。なんでこんなに販売費がかかってるの? と誰かが問う日が必ずやってくる。

そして今回発見された「日本の人事部」の施策、これこそ「なんでこんなに販売費が?」という問いが始まっているサインに見えて仕方がないのだ。いや、ご本人たちはこれでリードの質がアップして、と本気で思っているのかもしれないけど。

 

嫌気がさして生け簀を抜けるユーザーが出てくるのか、それとも(ちょっと信じがたいが)思惑通りリードの質が向上し生け簀サイトとしてより発展するのか、これからの動向が気になってきたのだった。

 

しかしなあ。

日経系やitmedia系のように、対象、商品の性質、サポートするWEBマーケティングの方法がすべてかけ算になっているものをフルラインナップな生け簀サイトと呼ぶとすると、「日本の総務部」は対極である。対象、商品の性質、サポートするWEBマーケティングの方法がすべて一通りという専業生け簀サイトは、やはりその集中(という名の局所最適)によって顧客の動向の変化に追従できず滅びていくのではないかと思うのだ。

フルラインナップな生け簀サイトであればポートフォリオ的にやっていけるのに対して、専業の生け簀サイトはいつも代替案なしの一本勝負しかできない(まあ、だからあんな愚策をやらざるを得なくなったのだと思うのだけど)。

しかも集中した事業環境というのが、コモディティを筋の悪い方法で売ること(WEBベースのリードジェネレーションと電話ベースのリードナーチャリング)なのだから...やはり潰れるか、身売りまでいくと思うんだけどな。

来年くらいには筋道が判るかな?

 

なんにせよウオッチ対象があるのは良いことであって、来年まで生きていこうという気持ちに1ポイントくらい加算されたのであった。善哉。

 

*1:で、彼らの初回の電話の目標は、WEB MTGをセットすることで、これにYESというとさらに1時間の出費が発生することになる。

*2:だってうまくやっている会社を横目に見て、今なお生け簀サイトを使ったリードジェネレーション+テレアポによるリードナーチャリングに命をかけてるんだから、正気だとは思われないのであって。