なんだ、残念だな、このひと。
「戦争まで」を子供のために買って、自分でも読んだときの違和感がはっきりした。
資料を読むということにこだわるのは良いんだけど、資料の整合性をどう追っかけるかに汲々としてて実体には踏み踏み込まないとか、その時代に生きている人の気持ちを顧みない感じとか、逆に構造的な欠陥があることを暗示させつつ自らそれを語ることを避け続けるとか、歴史のパターンを追う余りに事象の固有性(一回性)を論じないとか。
書中では陰謀論のことをあげつらっているが、しかしこの本だって特定のバイアスがある。「(資料からみると)バカばっかりだ。もっと物が考えられなかったのか?」という、現在を高みにおいてそこから見下ろす視線だ。
ずーっと引っかかっていたことが、この朝日新聞の記事を読むことで形になった。なるほど、役に立つじゃないか朝日新聞。
このインタビューも、事象の中に分け入らず、資料と資料の関係性の中に閉じて、安全に語れるところだけを語るという加藤氏の特質をうまくつかんでいる。
残念ながら本を子供に渡すことは敵わなかったが、夏に家に来てくれるという甥に渡すことにしよう。良い本だけど批判的に読んでほしい、というメッセージと共に。